デリバリー市場の大変革期

本レポートは、CCCMKHDがV会員にサービス提供している家計簿アプリ「レシーカ」ユーザー(約5万人)のレシートデータと、CCCマーケティング総合研究所による全国主要企業へのヒアリング調査に基づき、独自の視点で「食」業態を中心としたレポートをお届けします。
 

デリバリーはリテイル間競争を激化させる
 猛暑による影響が様々なリテイルに出ています。以前は、猛暑になると内食拡大に有利と言われていましたが、近年は調理の敬遠を招き、外食が伸長する傾向にあります。調理を避けるという点で中食も堅調に推移する傾向があり、内食・中食・外食のシェアでは以前ほど内食圧勝という傾向はみられません。猛暑になるとデリバリーも利用が拡大する傾向にありますが、直近の動きではやや上昇も際立った伸びにはなっていません。
 デリバリー市場は「Uber Eats」や「出前館」などのインフラ拡充もあってコロナ禍に急激な市場拡大を遂げましたが、アフターコロナによって利用に変化の兆しも出てきています。コロナ禍前~コロナ禍にかけてはデリバリー市場の主たる客層はファミリー層で寿司・ピザなど、シェア型メニューが主体でした。また、需要期はひなまつり、こどもの日、敬老の日などのイベントデーが中心で「ハレ」の利用業態と言えるものでした。一方、コロナ禍で急増したのは個人の利用です。個人利用の増加には「Uber Eats」などのデリバリーサービスの転換が大きく貢献していますが、コロナ禍にあって店舗営業ができない中で生存策としてデリバリー対応を行った店舗が急増し、デリバリーされるメニューが大幅に拡大されたことが需要拡大につながりました。特にこの期間にデリバリー利用が拡大したのがアジアンフードで、現在では本格的なインドカレーやタイ、ベトナム、シンガポール料理など、アジアンメニューはデリバリー市場において一角を占める地位となっています。
 デリバリーサービスのインフラ拡充は外食企業の戦略にも大きく影響しています。以前はデリバリー対応には自社で人員を抱えていましたが、最近は多くの企業がデリバリーのアウトソーシングを進め、内部対応している企業の割合は大幅に減少しました。また、デリバリーの利用拡大につながっている企業の多くは、以前のようなファミリー需要を前提としたメニュー構成ではなく、おひとり様需要にも対応している企業が大半となっている点は注目されます。そして、全体的にデイリーな利用に軸足を置いたメニューを提供している企業の業績が好調に推移しており、デリバリー業態の勝ちパターンは大きく変化してきています。
 こうしたデリバリー市場の変化・転換を受けて他業態のデリバリーサービスの在り方も変化してきています。コンビニエンスストア市場では多様な商品を一度にお届けできるメリットを活かし、デリバリー需要獲得に有利とされてきました。しかし、圧倒的な店舗網がかえってデリバリー需要の阻害要因となってきましたが、デリバリーサービスの活用により24時間営業の強みを徐々に発揮しつつあります。また、デリバリーフードの中心商品であるピザの店内調理を開始するなど、市場の取り込みにさらに力を注いでいます。出前から始まり日本特有の市場拡大を遂げてきたデリバリー市場は今後、大変革期に突入しようとしています。


デリバリー ウーバー 出前 コンビニエンスストア 勝ちパターン




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※レシーカとは、CCCMKホールディングス株式会社がV会員に提供する家計簿アプリ。
レシーカユーザー(約5万人)のレシートデータを分析することができる。


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CCCマーケティング総合研究所
担当:大澤