異業界からの参入で活発化する外食市場

本レポートは、CCCMKHDがV会員にサービス提供している家計簿アプリ「レシーカ」ユーザー(約5万人)のレシートデータと、CCCマーケティング総合研究所による全国主要企業へのヒアリング調査に基づき、独自の視点で「食」業態を中心としたレポートをお届けします。
 

生鮮×飲食で内食・外食市場を攻略
 23年の年末からアルコール需要が回復してきています。外食では苦戦が続いていたパブ・居酒屋業態もここ数か月の動きをみると、利用の大幅減少が目立っている宴会需要もじわじわと回復基調にあります。直近の3・4月の動きでは歓送迎会の需要が全国的に広がりを見せており、業界の大手チェーンを中心に夏のビール需要拡大期にさらに伸長を期待する声が聞かれる状況です。パブ・居酒屋需要の回復には宴会需要の伸びとともにインバウンド利用層の増大が大きく影響していますが、この利用客層の変化に応じ、居酒屋業態の一部では「お通し」の見直しが行われたり、4~6人のグループ客用の盛り込みメニューが採用されたり、インバウンド客利用の取り込みに向け、更なる進化を遂げています。
 ほぼすべての業態で好業績が続いている外食ですが、店舗寿命の短縮化が言われているラーメン店や原価高騰で価格維持が厳しくなっているステーキ業態、専門メニュー型業態への転換が進んでいるパスタ業態、一時店舗増加が続いていたダイニングカフェ業態などでは店舗の改廃が増加しており、市場ニーズは目まぐるしく変化している状況も見てとれます。
 こうした激変する外食市場において注目される動きが、卸店の外食店展開の加速です。コロナ禍で外食店が大幅な利用減に見舞われる中、専門卸店も等しく厳しい状況が続きました。以前は外食店専門に商品を納入していた卸店は生き延びるためにスーパーマーケットなど、新たな取引を開始するなど生き残りに向けた動きを行っていましたが、その中で外食店や中食店への展開を行う動きも日本各地でみられた動きです。このような生き残り策として生まれた業態の一つが精肉店と併設された焼肉店や、鮮魚店を併設する居酒屋店・寿司店といった複合業態です。卸ならではの専門性と信頼感が外食店としてのブランド確立にもつながっており、総じて好調な動きを見せています。精肉店・鮮魚店ではロス対策として中食惣菜業態を併設することは以前から見られていましたが、さらに一歩進んで外食併設となるとサービス人員・調理人員の確保など、異なる視点も必要となるため、一定の障壁がありましたが、現状ではこうした障壁も乗り越え、多店舗化する動きも出てきており、今後の展開が注目されるところです。
 同様の動きとして、成長著しいスーパーマーケットチェーンの「ロピア」も19年1月に外食事業会社を立ち上げ、戦略的な投資を行っています。銀座に高級焼肉業態を展開しているほか、「料理の鉄人」として知られる道場六三郎氏の名前を冠した業態の展開など、確実に店舗数を伸ばし、グループで売上高1兆円を目指すロピアの成長にも貢献しています。外食ブランドを冠した調味料の販売など、グループシナジーを発揮する取り組みも開始しており、次なる一手は大いに気になるところです。スーパーマーケットや専門卸店といった異なる業界からの外食参入の動きは市場の拡大基調に合わせ、さらに活発化してくることが予想されており、今後の外食市場を象徴する動きとなるかもしれません。




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※レシーカとは、CCCMKホールディングス株式会社がV会員に提供する家計簿アプリ。
レシーカユーザー(約5万人)のレシートデータを分析することができる。


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担当:奥田