2024年1月

本レポートは、CCCMKHDがT会員にサービス提供している家計簿アプリ「レシーカ」ユーザー(約5万人)のレシートデータと、CCCマーケティング総合研究所による全国主要企業へのヒアリング調査に基づき、独自の視点で「食」業態を中心としたレポートをお届けします。
 

スーパーマーケット包囲網の拡大
 24年はアメリカ大統領選挙などの各国選挙が行われる1年であり、政治・経済ともに大きな転換が進む1年となることが予想されます。国内経済においては株高が続いていますが、賃上げなどの動きもある一方で物流の24年問題などもあり、物価はさらに上昇していく可能性が高く、生活防衛的なトーンが強まる懸念もあります。
 生活密着業態であるスーパーマーケットは、ここ数年は内食回帰の動きが追い風となり全国的に安定した業績を確保することが出来ていましたが、昨年の秋口以降、徐々に地域や出店エリアによって利用動向が変化して います。全体でみると内食はコロナ禍前よりも確実に拡大していますが、5類変更以降はより外出が活発化し、外食利用を押し上げる要素となっています。外食利用時間帯は徐々にではありますが夜間需要も拡大基調にあり、24年はさらにその動きが活発化していきそうです。外食利用の回復が進む中で、スーパーマーケットの売り上げにも変調が見られており、昨年の夏場以降、スーパーマーケットの中食需要の増加傾向が鮮明になっています。アイテム別では天ぷら・フライ類が好調を支えており、販売アイテムを見ると「内食疲れ」「内食飽き」といった動きが進展していることが想像される結果となっています。
 スーパーマーケットの売り上げの中核となる生鮮三品については依然として堅調に推移しており、まだスーパーマーケットらしい販売が出来ている状況が続いていますが、人流拡大とともにさらに利用形態は変化してくることが予想されます。
 こうした市場環境の変化が進む中でセブン‐イレブン・ジャパンがよりスーパーマーケットの要素を強めた新業態店「SIPストア」を出店しました。約100~150坪の面積でセブン&アイ・ホールディングスのグループ資源を活かした商品展開で既存のセブン‐イレブンよりも多い5,000SKUをそろえる新たな業態となっています。社会全体の変化を見据え、非調理世帯を意識した品ぞろえとなっている点が特徴の一つと言えます。スーパーマーケット市場ではイオンの「まいばすけっと」などの小型モデル開発が進み、出店が増加していますが、「SIPストア」の展開はこうした動きに対するコンビニエンスストア側からのアプローチであり注目されるところです。
 一方でドラッグストア業態は前年から食品ジャンルの強化をより鮮明にする「ゲンキー」、「コスモス薬品」などの動きが活発化しており、一部地域においては、ドラッグストアは完全にスーパーマーケットの競合業態としての存在感を強めています。
 コロナ禍においては順風満帆で小売業態の中で優位を保ってきたスーパーマーケット市場ですが24年はコンビニエンスストアやドラッグストアとの業態近接性がより強まり、従来のような戦い方では業績伸長が難しい1年となることは間違いなさそうです。生活に密着した新たな提案がより強く求められますが、対応の遅れはそのまま企業の存立リスクにつながる可能性もあり、各社の対応が注目されます。




                 これまでの産業動向レポートはこちらから!

※レシーカとは、CCCMKホールディングス株式会社がT会員に提供する家計簿アプリ。
レシーカユーザー(約5万人)のレシートデータを分析することができる。


【お問合せ先】
CCCマーケティング総合研究所
担当:奥田