2023年8月

本レポートは、CCCMKHDがT会員にサービス提供している家計簿アプリ「レシーカ」ユーザー(約5万人)のレシートデータと、CCCマーケティング総合研究所による全国主要企業へのヒアリング調査に基づき、独自の視点で「食」業態を中心としたレポートをお届けします。
 

再拡大に向かうパブ・居酒屋市場
 外食市場は流動拡大に伴い、すべての業態がコロナ禍の厳しい状況から脱して集客が好調に推移しています。個人店を含む、中・小規模店の一部はコロナ禍での厳しい環境を政府支援で乗り切ってきてきましたが、食材原価の高騰、水道光熱費の値上げなどの影響が大きく、直近では集客が回復し業績改善は進んでいるものの、政府支援が停止されて以降は、資金繰りに苦しみ倒産に追い込まれる企業が少なくありません。
 コロナ禍は外食産業に大きなダメージを与え、今なお、その影響が残っている状況ですが、中でも大きなダメージを受けたのがパブ・居酒屋業態です。もともと個人店のシェアが高い市場の一つでしたが、コロナ禍を経て、個人店のシェアが落ち込み、チェーン店のシェア占有率が大きく上昇しました。また、コロナ禍以前は数十人単位の宴会対応が可能ないわゆる「大箱店」が一定の店舗数を数えていましたが、コロナ禍で閉店に追い込まれた店が多くなっています。「大箱店」の一部はインバウンドの集客が回復したことを受け、直近では残存効果を得ている店も多くなっていますが、こうした状況が、また新たな構造変化を生んでいます。
 業態全体のトレンドでみると、コロナ禍前は海鮮居酒屋を中心に和風居酒屋の勢いがビアホールなどのパブ・洋風居酒屋を上回っていましたが、コロナが明けて以降はイタリアンやスペイン料理を軸とした洋風のダイニング居酒屋が勢いを増しています。一方、コロナ禍前からやや供給過剰気味に陥っていた海鮮居酒屋は店舗数を大きく減らし、業態転換も進んでいます。海鮮居酒屋の中で転換が目立つパターンは寿司居酒屋で、より食にシフトして「ちょい飲み」需要に対応しています。この市場については寿司チェーンの進出もあり、今後もさらに競争が増していくことが予想されます。
「ちょい飲み」と呼ばれる食を中心とした業態が勢いを増す一方で、しっかり飲むニーズに対応し、コロナ禍前以上に利用活性化が進んでいるのが「センベロ」と呼ばれる業態です。業務利用が大幅に落ち込んだ酒店の生存策として「角打ち」が増加したことに加え、スナックやバーの小規模店がコロナ禍で激減したことを受け、「センベロ」の出店が加速しています。人件費が高騰した上に、人材獲得競争が激しさを増す中で外食店にとって運営人員の圧縮は喫緊の課題となっています。こうした課題の解決にも向いている「センベロ」は新たなチェーンを形成する土壌ともなっており、さらなる成長・拡大が見込まれます。
 居酒屋はもともと外食業態の中で粗利の高いフォーマットの一つでしたが、コロナ禍によって宴会は減少し、以前のような営業形態を維持することは困難になっています。食材原価は依然として上昇傾向にあり、人材調達もさらに厳しさを増している状況です。一方でアルコール需要は回復傾向にあり、パブ・居酒屋市場には追い風が吹いています。立地や食ニーズの変化をどう捉えるか。パブ・居酒屋市場は大きな転換点にあると言えそうです。







                 これまでの産業動向レポートはこちらから!

※レシーカとは、CCCMKホールディングス株式会社がT会員に提供する家計簿アプリ。
レシーカユーザー(約5万人)のレシートデータを分析することができる。


【お問合せ先】
CCCマーケティング総合研究所
担当:奥田