2023年4月

本レポートは、CCCMKHDがT会員にサービス提供している家計簿アプリ「レシーカ」ユーザー(約5万人)のレシートデータと、CCCマーケティング総合研究所による全国主要企業へのヒアリング調査に基づき、独自の視点で「食」業態を中心としたレポートをお届けします。

外食からリモデル進む伝統食・天ぷら
 コロナ禍により外食需要が大幅に減少する中でも、できたてのおいしさを売りにする「天ぷら」は一定のニーズを保って推移してきました。接待需要が利用の大きなウエイトを占めてきたディナーレストラン型の高級店はコロナ禍の影響を大きく受けましたが、カジュアルプライスの業態は幅広い年齢層と昼夜問わない需要に支えられ、外食需要が落ち込む中でも比較的安定した動きを見せていきました。また、テイクアウトを強化し、売り上げを伸ばす企業も散見され、外食の「天ぷら」はコロナ禍で健闘した業態の一つです。
 外食店が一定のパフォーマンスを示す中で中食における「天ぷら」もコロナ禍においてはスーパーの惣菜部門を支えるアイテムとして堅調な動きを示してきました。さらに年末から続く様々な食品の値上げや水道光熱費が上昇してきたことが内食の天ぷら調理機会を減らし、中食における「天ぷら」はスーパーの惣菜の中でも上位安定している企業が多くなっています。また、商品特性から取り扱いが少なかったコンビニエンスストアでも天ぷらを使った米飯・麺類の商品が増加し、堅調な売り上げを示している点は注目されます。
 外食店の「天ぷら」はファストフード型の丼チェーンとコース提供を主体とする高級業態が中心となってきましたが、九州・関西圏から揚げたてを提供するカジュアルな定食業態が関東圏にも進出し、商業施設を中心に出店数が増加してきています。
 天ぷらはもともと野菜や魚介中心で肉類のメニューがほとんどありませんでしたが、直近で店舗数を伸ばしているチェーンの多くは「とり天」を中心に肉系メニューを提供している点も大きな特徴となっています。「とり天」は、揚げたてはもちろん、冷めても劣化が少ないアイテムであり、テイクアウトにも適しているなど、その商品特性と原価の安定性から早くも中食・惣菜でも取り扱いが拡大してきています。
 「天ぷら」は調理面では一定の技術が求められるため、もともと外食に優位性があるジャンルですが、拡大基調にある天ぷら定食業態ではIHフライヤーを活用した調理技術革新が進められ、高い調理レベルを必要としない点も出店加速の背景となっています。
 こうした新しい動きもあり「天ぷら」では外食・中食が拡大し、内食はやや押される傾向にありますが、内食においても「揚げずに焼く」天ぷら粉がヒットしており、今後の内食動向も注目されるところです。
 最近の外食業界の動きをみると「天ぷら」や「そば」といった長い伝統に支えられ、個人店優位で推移してきた業態で新たな業態モデル出現の動きが出てきています。これらの業態は底堅い需要が共通要素であり、わずかな業態のモデル転換でも大きな効果を上げることが可能となっています。コロナ禍は外食業態に様々なダメージを与えましたが、一方で新たな業態創出の機会にもつながっていることは間違いありません。従来のやり方、メニュー構成、調理法を見直すことで再活性化が図れる業態もまだ多数あると思われます。






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※レシーカとは、CCCMKホールディングス株式会社がT会員に提供する家計簿アプリ。
レシーカユーザー(約5万人)のレシートデータを分析することができる。


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CCCマーケティング総合研究所
担当:奥田