2022年12月

本レポートは、CCCMKHDがT会員にサービス提供している家計簿アプリ「レシーカ」ユーザー(約5万人)のレシートデータと、CCCマーケティング総合研究所による全国主要企業へのヒアリング調査に基づき、独自の視点で「食」業態を中心としたレポートをお届けします。

高級食材で値上げに抗う
 年末年始の商戦は小売全体、好調に推移しました。インバウンド依存が大きかった百貨店はコロナ禍直後の売り上げは大きく落としました。直近はハイブランドや高級時計・宝飾品などの高額品の好調な動きに支えられ、業績回復傾向が鮮明になっています。コロナ禍で苦労していた初売り・福袋などの販売も今年は本格再開となり、スタートダッシュに貢献する動きとなった百貨店が多かったようです。
 一方で、様々な領域で値上げの動きは今後も断続的に続くため、すべての小売業態で値上げによる消費減速が懸念されています。外食市場はコロナ禍で利用客数を大きく落としましたが、行動制限中は客数回復を目指すことは困難と考え、その間に値上げに踏み切ったチェーンが少なくありません。さらに、その後、原材料の高騰、人員獲得競争の激化による人件費増などの要素が加わり、ほぼ全業態で値上げの動きが続いています。現状では長く抑制されていた外食利用を楽しみたいという動きが強く、値上げ影響による客数減が顕著にはなっていないものの、水道光熱費の値上げなどが家計を圧迫するため、春以降、影響が出てくることが懸念されます。
 値上げによる影響については、コロナ禍で業績を伸ばしたスーパーマーケットでは早くも部分的に出ているようです。買い上げ点数の抑制基調が続き、延べ客数が落ち込んでいる企業も出てきており、利用機会が抑制される動きが感じられます。
 やや懸念される動きが小売業態の中で見え隠れする状況の中で客数減の影響を軽減し、単価貢献するものとして注目されているのが「高級食材」です。コロナ禍で内食機会が増えたことが内食メニューの拡大につながり、高級魚やブランド野菜がスーパーマーケットでも販売されるようになりました。さらにこの動きは拡大し、スーパーマーケットやコンビニエンスストアに並ぶパスタソース、カレー、調味料などで、うに、伊勢海老、トリュフ、からすみなど、高級食材を活用したアイテムが一気に拡大しました。高級食材活用商品は総じて売り上げ好調なものが多く、さらにジャンル拡大が進んで、現在では菓子、ふりかけなど、あらゆるジャンルに及んでいます。こうした商品は高価格である理由が生活者に納得されやすいので値上げの波が押し寄せても販売数量に影響が出にくいのではないかと小売りの世界でも期待が寄せられています。
 外食でも、内食メニューにおける高級食材活用の流れを活かす動きが出てきており、ファミリーレストランを筆頭にカジュアルレストラン業態でもフォアグラやトリュフ、ふかひれなど、高級食材を使用したメニューを提供する動きが活発化しています。
 23年は年初より“値上げ”が各業態の業況を左右することになりそうですが、生活者に理解される価格、納得感のある商品は必ず支持されます。値上げの中でも売れる商品の開発・発見に注力される1年となるのではないでしょうか。


産業動向レポート クリスマス 高額品 高級食材

 

※レシーカとは、CCCMKホールディングス株式会社がT会員に提供する家計簿アプリ。
レシーカユーザー(約5万人)のレシートデータを分析することができる。


【お問合せ先】
CCCマーケティング総合研究所
担当:杉浦・斎藤