【産業動向レポート】_2021年12月

本レポートは、CCCマーケティング株式会社がT会員にサービス提供している家計簿アプリ「レシーカ」ユーザー(約5万人)のレシートデータと、CCCマーケティング総合研究所による全国主要企業へのヒアリング調査に基づき、独自の視点で「食」業態を中心としたレポートをお届けします。
 

積み増すアイテムの発見

 流動拡大により小売全体に明るさが戻りつつあったのも束の間、オミクロン株の感染急拡大を受けて、再び小売・サービス業は不透明な状況に陥っています。特に都心部では感染急拡大後の夜間流動は減少に転じるエリアがほとんどで、利用回復傾向にあった外食店は利用に急ブレーキがかかる状況です。

 長く続くコロナ禍の中で、客数減少が企業業績に及ぼす影響は大きく、その落ち込みを埋めるべく、小売業は様々な工夫で客単価増を図ってきました。ワンストップショッピングの拡大傾向は、客単価増にプラスに作用している業態が多くありますが、工夫を重ねながら客単価増に向かった企業と風まかせの客単価増で推移してきた企業に徐々に差が生じてきているようです。

 コロナ禍による客数の落ち込みが顕著な外食企業は、生き残りをかけた価格の引き上げを行っている企業が多くありますが、そんな中で注目される動きが「〇〇人盛」などの多人数利用を想定したメニューの増加です。また、個人利用層への利用にも複数人数でのシェア利用にも対応可能な「メガ盛」メニューの投下もコロナ禍で増加してきています。外食の楽しみが減る現況にあってSNSによる拡散は生活者の刺激のひとつになっており「メガ盛」は話題化という面でもプラスに作用して、利用は拡大傾向にあります。

全体に複数での利用を想定したメニューの投下が拡大する一方で、一部のチェーンでは「ジャストサイズ」「ミニサイズ」「スモールポーション」といったメニューを拡大する動きも広がってきています。

 ファミリーでの利用増を受けて、コンビニエンスストアではスモールポーションメニューをコロナ禍の中でいち早く投下して、すでに“定番”化しつつありますが、同様の動きが外食チェーンの中でも広がってきている点は注目されます。こうしたスモールポーションメニューは、あと一品の買い足しにプラスに作用するため、客単価増に貢献していることはもちろんですが、コンビニエンストアや外食企業によると、今まで利用が少なかった層の取り込みにも効果的であるという声が多く聞かれます。

 男性利用の多い中華チェーンではスモールポーションメニューが女性客層やシニア層の獲得に大きく貢献しています。また、スモールポーションメニューから準定番となるヒットメニュー獲得につながった外食チェーンも出現しています。先行するコンビニエンスストアでは、買い足しに貢献するスモールポーションメニューと新規客層の獲得を狙うスモールポーションメニューを使い分け、利用拡大につなげるべくテストが繰り広げられています。客数増を望むことが難しい現状だからこそ、足下の商品構成を見直し、買い増しや客層拡大につながる打ち手はないか、お客様のレシートから想像をめぐらせていくことが重要になってくるでしょう。

 

 

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担当:杉浦・斎藤