新たな生活者意識を探るPART7

 前回の「新たな生活者意識を探るPART6」では、理美容品を中心にどのようにビヨンドジェンダー消費が生活者の中に浸透しているのか、そして、消費経験後の変化について見てきました。理美容品のビヨンドジェンダー消費は、年々経験者が男女ともに増加しており、「ビヨンドジェンダー消費」経験の後は、男性がより継続購入の経験を重ね、高い購入意欲を持って消費を継続している傾向が見えてきました。
 今回は、そんな「ビヨンドジェンダー消費」を促進させる要因や購入の実態について見ていきましょう。
今回も、CCCマーケティング総合研究所(以下、「CCCマーケティング総研」)が2022年6月に実施し、1,620人より回答を得た「商品に関する意識調査」を基にお送りします。

 ※本コラムは商品に対する性別の意識や利用状況、商品に対するご意見を頂戴し、調査結果を公表することで、今の生活者の思いを理解いただくことを目的としています。

 

異性向けの商品利用経験が、商品選択の幅を広げている?
 図1の「ビヨンドジェンダー消費前の経験」では、アパレル(外出着)、アパレル(家中着)、化粧水・乳液、メイクアップ商品の4カテゴリーを見ていきたいと思います。
 ビヨンドジェンダー消費についてのインタビューを実施している中で、ビヨンドジェンダー消費経験者にとって購入前に起きている経験が、消費へのハードルを下げているのではないか?という仮説を持ちました。具体的には、以下のようなインタビューの声がありました。
男性20代「母親のコートを、お古でもらって着ています。自分では買えないバーバリーのコートなのでありがたいです。」
女性10代「兄妹とTシャツやトレーナーを共有している。」
男性20代「実家にいた時は、母親の化粧水を使ってました。」
上記の様な経験から、自身で商品を選ぶ際に母親の使っていた化粧水を購入する事に躊躇がなくなり、異性向けアパレルの利用経験があると選択肢を広く捉える傾向があるようでした。
 経験の内容は、「異性の家族と共有・共用していた経験がある」「異性向けのおさがりや中古品を利用した経験がある」「異性向けの商品を借りたことがある」「異性向けの商品をサンプルで貰い利用した経験がある」「異性向けの商品を自宅以外で利用した経験がある」の5つをビヨンドジェンダー消費経験者に聞きました。
 アパレル(外出着・家中着)と、理美容品(化粧水・乳液、メイクアップ商品)では、経験の重ね方が異なる様です。詳しく見ていきたいと思います。
 まず、アパレル(外出着・家中着)は共に、「異性の家族と共有・共用の経験」が最も高くなりました。次いで、「異性向けのおさがりや中古品の利用経験」が続く形になっており、異性向け商品を借りたり、利用したりという経験が続きます。
 理美容品は、化粧水・乳液とメイクアップ商品で異なる経験が見えてきました。化粧水・乳液は、アパレルと同様に「異性の家族と共有・共用の経験」が最も高い経験となっていますが、次点以降は「異性向けの商品を借りたことがある」「異性向けの商品を自宅以外で利用した経験がある」と続き「異性向け商品をサンプルで貰い利用した経験がある」も1ポイント前後の差で続いています。
自宅以外で化粧水・乳液を利用するシーンとしては、大衆浴場や旅館、ホテルなどの宿泊施設での利用、また友人宅での利用経験も含まれるようです。
 続いて、メイクアップ商品を確認してみます。メイクアップ商品は、「異性向けの商品をサンプルで貰い利用した経験」がもっとも高くなっています。次いで、「異性の家族と共有・共用していた経験」と続きます。自身で利用経験してから購入に至る過程は同じですが、サンプル利用と家族内利用で経験の入り方が分かれています。
図1からも分かるように「ビヨンドジェンダー消費」経験者の多くが「異性向けの商品を利用した経験」をしていることで自身の商品を購入する際に、商品選択の幅を広げているようです。

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商品との出会いは、店と近しいヒトからの影響も
 図2では、「ビヨンドジェンダー消費」を初めて経験する際に、購入商品をどこで知るようになったのか、また商品を知るために利用したものを確認していきたいと思います。
ここでは、アパレル(外出着・家中着)を見てみましょう。商品を知るきっかけや、より詳しく商品について知るためには「店頭で直接商品を見て」が2回目以降も含め最も高い状態になっていますが、2位以下は、大きく状況が変わっているようです。
 アパレル(外出着)の「自身で初めて異性向けの商品を購入した時に、商品を知るきっかけとなったもの」を確認すると、友人・知人・家族の影響を見る事ができます。また、「Instagram」で商品を認知する人も一定存在しているようです。実際にインタビューの際に40代女性「自分に合う服が無くて困っていた時に、Instagramで女性がメンズ商品を着こなしているのを見てなるほど!と思いお店へ買いに行きました」という声もありました。
 続いて、初めて異性向けの商品を購入する際に、どのようなかたちで情報を収集しているのかを見ていきます。「商品を知るきっかけ」と比較すると、「店頭で直接商品を見る」行動が大きくポイントを落としています。かわりに、「ブランドサイト」からの情報収集や利用者の経験(友人・知人・家族、口コミ)の情報を集める行動に動いている事がわかり、検討商品のスペックや利用経験者の意見を購入時の判断としていると想像できます。
続いて、2回目以降の購入時に参考にしているのは、「店頭で直接商品を見る」が最も高くなり38ポイントを超えています。それに続き「Instagram」「ブランドサイト」「クチコミ・レビューサイト・ランキング」と並びます。新たな商品との出会いを求めつつも、商品の詳細を利用者から得ている行動に変わりは無いようです。
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男性ビヨンドジェンダー消費経験者の1割以上が中古品・ユーズド品利用から
 図3では、アパレル(外出着・家中着)を購入回数別に、商品を購入する場所と状態を見ていきたいと思います。
 男女で比較すると、それぞれの傾向が見えてくるようです。商品を購入する場所においては、男性が、WEBを利用して購入する傾向が強く見られます。また、商品の状態においても男性は中古品やユーズド品を購入する人が、1割以上を占めています。男性は、実際のWEB活用で非対面での購入や、試着や使用感などが思うように把握出来ない女性モノでも中古品であれば価格を含め購入しやすい、という諸々の納得感を消化して、女性モノを購入しているのではないかと言えそうです。
 2回目以降の購入になると、個人同士で商品を売り買い出来る仕組みを男性がより活用していることにも注目ではないでしょうか。一度商品の購入をしたことで商品の価値を実感し、継続購入をしたい人たちが個人同士で商品を売り買い出来る仕組みを利用しているのではないかと読み取れそうです。
実際に、インタビューの中でも古着からビヨンドジェンダー消費を経験した人の体験談も多く聞く事ができました。
30代男性「10代のころ、古着屋で気に入った洋服を購入して家に帰って初めて母親に『合わせが違うから、それ女性モノのカーデガンよ』と言われたんです。その時のインパクトが強烈だったので覚えています。女性モノでも着る事ができるんだ、とその時感じたのでそれ以降は女性モノも買い物の選択肢になりました」
女性モノ・男性モノの概念を持たずに商品選定をすると、その人の本当に欲しいものを手に入れることができるのかもしれません。
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 今回は、「ビヨンドジェンダー消費」を促進させる要因や購入の実態を見てきました。
異性向けの商品を購入前に利用している経験や、おすすめされた経験が、実際の「ビヨンドジェンダー消費」に繋がる素地を作っているのではないかという背景も見えてきました。また、新商品だけでなく、中古品・ユーズド品といった商品が「ビヨンドジェンダー消費」の窓口を広げている実態も見えてきました。生活者の多くが、中古品・ユーズド品へのリユースを活用する事に前向きになってきています。この様な、新たな価値観が生まれる場所に、新たな消費傾向も潜んでいるのではないでしょうか。

 


 

過去の「新たな生活者意識を探る」調査は、こちらからご覧になれます
PART6
PART5
PART4
PART3
PART2
PART1


 

(参考)本調査で回答を得ている指定商品は以下の通り
アパレル(外出着)/アパレル(家中着)/アクセサリー・ジュエリー/靴/バッグ・リュック/お財布・小物入れ・ハンカチ/化粧水・乳液/メイクアップ商品/日焼け止め/整髪料・ヘアクリーム・ヘアワックス/ボディシート・制汗剤/香水・フレグランス/ネイルケア用品/除毛用品・除毛剤/美容機器(美顔器・美顔スチーマー・ヘッドマッサージ器など)

【調査概要】
調査地域:全国
調査対象者:男女16~69歳のT会員
有効回答数:1,630サンプル(事前調査3,936サンプル)
調査期間:2022年6月28日(火)~2022年7月1日(金)
実査機関:CCCMKホールディングス株式会社(調査時は旧社名:CCCマーケティング株式会社)
調査方法:インターネット調査(Tリサーチ)
 
本調査の集計表を販売しております。
詳しくは、下記をご確認の上、お問い合わせください。
 
【調査内容】
質問数:全18問
<質問項目>
・自身で利用するための、異性向けの商品やサービスの購入実績・回数・購入時期
・最近1年間の異性向けの商品やサービスの購入点数
・異性向けの商品やサービスの購入後の購入意欲・購入点数の変化
・異性向けの商品やサービスの購入のきっかけ
・初めて異性向け商品を購入した場所・方法
・異性向けの商品やサービスの購入2回目以降の購入場所・方法
・異性向け商品購入後の行動、購入前の経験
・商品購入時のこだわり 等

<属性項目>
性別・年代・居住都道府県


【集計内容】
・性年代別クロス集計

【注意事項】
・集計は日本の性年代人口構成比に合わせて調整しています。
・集計対象数が極端に少なくなる質問は出力していません。

【商品名/番号】
品名:商品に関する意識調査(2022年6月)
番号:22-014-002
【価格】
集計一式:36,000円(税別)
             
                                                                          


【お問合せ先】
CCCマーケティング総合研究所 
担当:杉浦・斎藤
cccmk-souken@ccc.co.jp

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