生活者意識から見る農水産物産地イメージ

CCCマーケティング総合研究所(以下「CCCマーケティング総研」)は、『暮らす人と共に歩み、共に考えるシンクタンク』として生活者の意識を起点とした戦略設計に重点を置いています。更に、日本全体の視点に立って捉えるだけでなく、地域ごとの産業や未来にも目を向けていきたいと考えています。

 今回、CCCマーケティング総研は、「農水産物の産地イメージに関する調査」を2021年3月2日(火)~29日(月)にかけて、9143人のT会員の皆様を対象に実施しました。
 調査対象は、2019年度農林水産省が発表している生産農業所得統計より、主要な農水産物から産出額の高いものを中心に44品目(※1)を選定し、生活者が農水産物に対して持っている産地に関するイメージ調査を実施し、「Customer Indicator(生活者意識指標)」(※2)として整えました。

また、調査結果の生活者意識指標を、3つのエリア区分で集計し、①全国 ②東西区分 ③全国8地方区分(※1)のそれぞれの地域に在住している生活者の回答を集計しています。

本コラムでは、今回調査対象とした44品目の中から農産物の「ねぎ」(玉ねぎを除く)と「メロン」を見ていきたいと思います。

我々が「ねぎ」と「メロン」に注目した点としては、
・国内に有名な産地が複数あること 
・国内にある有名な産地が東西区分にそれぞれに分布していること 
この2つの視点から「ねぎ」と「メロン」を取り上げています。

最初に、それぞれの産物が、日本市場において、どの様な状況かを把握してみましょう。
農林水産省が発表している産出額から「ねぎ」と「メロン」の数字を確認すると、図1の通り過去5年間の産出額は減少傾向を示している事が分かります。

【図1】


最も思い浮かべる“ねぎの産地”は「群馬県」・“メロンの産地”は「北海道」

 早速、日本全国47都道府県に居住の皆さんが「ねぎと言えば、〇〇県?」の設問に回答した産地イメージから見ていきたいと思います。

図2の全国の生活者が回答した上位を見てみると、群馬県、埼玉県、京都府と続きます。
この3府県には、ねぎの有名な銘柄が存在しており、群馬県には、「下仁田ねぎ」。埼玉県は、「深谷ねぎ」(埼玉県庁のホームページ上では、「深谷ねぎ」のほか「越谷ねぎ」「吉川ねぎ」を埼玉の三大ブランドねぎと紹介しています)、京都府では、「九条ねぎ」を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
 同様に、メロン上位の北海道では、「夕張メロン」「富良野メロン」「らいでんメロン」、茨城県では「アンデスメロン」「イバラキング」など数多くの種類が生産されています。また、静岡県産は「一木一果」と呼ばれる方法で栽培されている「クラウンメロン」など、皆さんの記憶にある銘柄も多いと思います。

 このように、産地イメージ上位のブランド銘柄を見ると、産地の地域名がブランド名に入っている事が多い様に見受けられるのが特徴です。

【図2】
ねぎ ネギ メロン めろん ネギ生産高 ねぎ産地 メロン生産高 メロン産地 夕張メロン 下仁田ねぎ 深谷ねぎ 
※各順位の根拠となる詳細数字は、ダウンロード資料に掲載しています

 

次に、日本を東西区分で、みていきたいと思います。
我々が、エリア毎に分けて生活者の意識をみる理由は、流通網が関係しています。産物の鮮度を保ち、より新鮮な商品を生活者に届けるためにはより近距離での消費が望まれます。そのため地域性も確認してみました。

東日本在住者は、「ねぎと言えば、〇〇県?」と尋ねると最も多くの人が埼玉県と回答しています。続いて群馬県、千葉県と続き、西日本在住者では、京都府、群馬県、埼玉県の順となっています。「ねぎ」は、東と西に区分にすることで、東西の順位が全国順位とも入れ替わるという現象が起きています。一方の「メロン」に関しては、全国・東西区分共に同じ都道府県となっており全国的に同様の産地イメージを生活者が持っていると言えそうです。
 

全国8区分でみると

 図3では、ねぎに絞って全国を8地区分に分け、中国地方以外のすべての地区分において、上位3位までの都道府県は同じ府県(群馬県・埼玉県・京都府)で占めており、順位の変動のみが起きている状況です。

上位に入る3府県を見ていくと群馬県は、全国すべての地域別産地イメージで2位以上を確保しており、全国的にねぎと言えば群馬県の認識が生活者についていると言えそうです。
また、埼玉県は、関東と東日本で2位以上を確保していますが、近畿以西では順位を落とします。京都府は、西日本全域で1位を確保していますが、東日本では3位となっており、地域の影響範囲は、東西で異なる傾向がみられます。

【図3】
東西 中部 関東 近畿 中国 四国 九条ネギ 九条ねぎ アンデスメロン

※各順位の根拠となる詳細数字は、ダウンロード資料に掲載しています
 

生産量1位、ねぎは「千葉県」・メロンは「茨城県」

続いて都道府県別産出額とCCCマーケティング総研が調査した生活者の産地イメージ(全国)とを比較してみていきたいと思います。

【図4】

ねぎ、メロン共に、都道府県別産出額と産地イメージ(全国)の1位が異なっている事がわかります。
ねぎの産地イメージ(全国)で最も評価が高かった群馬県は、産出額としては欄外(全国7位)となっており、産地イメージが大きく上回っています。 前述した東西区分・8地方区分、すべての集計において上位3位までに群馬県は位置しており、全国的、かつ平均的に群馬県=ねぎの産地という認識の定着が浸透していると言ってもよさそうです。

続いて、ねぎの都道府県別産出額の視点から見ると最も高いのは、千葉県ですが、産地イメージを見ると4位となっています。図2・3で地域別の状況を見ても、千葉県はねぎの産地としてまだ認知の途上にあるようです。

今回は、都道府県別算出額と産地イメージを比較し、確認する事で、

◆産出額は小さいが、生活者の「産地イメージ」が高い都道府県

◆産出額は大きいが、生活者の「産地イメージ」が低い都道府県

を認識する事ができました。

では、この認識差の要因は、どこに起因するのでしょうか。本調査から農産物の産地となっている都道府県にお住まいの方が、自県の産物を認識しているのかを確認してみます。

【図5】
産出額 産地 都道府県 ネギが有名な都道府県 メロンが有名な都道府県 

産出額は大きいが、生活者の「産地イメージ」が低い千葉県や茨城県では、自県民の認識が10%以下と限定的です。それとは逆に産出額は小さいが、生活者に「産地イメージ」がついている群馬県や京都府では、府県民の半数以上が認識している数字となっています。

この数値を見ると、商品の認知やブランド構築には、産地に住む方々の意識醸成が、スタートと言えるのかもしれません。
 

産地イメージ 農水産物 調査 人気度 ブランド調査 認知率

(※1)無料ダウンロード資料掲載内容(PDF)~上記資料をダウンロードするボタンよりダウンロード可能です~
・ねぎ、メロンのエリア定義詳細を掲載①全国 ②東西区分 ③全国8地方区分
・図2・3・4の数字詳細を掲載
・農水産品44品目名の詳細名を掲載
(※2)Customer indicator(生活者意識指標)とは、
「●●と言えば、●●県」と回答した生活者の意識指標。
意識指標=回答者数÷回答者総数で表す。本コラム内では、わかりやすいように「産地イメージ」と表記している。

(※3)2019年度農林水産省の生産農業所得統計より都道府県別産出額順位を作成

 

【調査設計】
調査名:都道府県に関する調査より~農水産物の産地イメージ調査抜粋

調査期間 :2021年3月22日(火)~3月29日(月)
調査対象 :全国のT会員20代~60代男女 9143名
実査機関 :CCCマーケティング株式会社(Tアンケートによる実施)
本レポートで使用した農水産物産地イメージの回答サンプル数は、ねぎ4,604人、メロン4,539人


【お問合せ先】
CCCマーケティング総合研究所 
担当:杉浦・斎藤
cccmk-souken@ccc.co.jp

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