【生活者意識調査】2020年度大学生の学びと環境
- 2021.04.02
- 生活者意識調査
櫻咲く季節。
それは、誰しも新しい出会いや新しい環境に心を躍らせる季節です。
しかし、我々は1年前の2020年春以降、新型コロナウイルスという未知との戦い、そして共存へ至る過程で様々な行動制限を受けることになりました。また、現在もその状況は変わりません。
制限を受けているひとつとして、未来を担う若者たちの学びの場においても、さまざまな変化が起きています。
今回、CCCマーケティング総合研究所が主催している「学生マーケティング研究会」にて、「2020年度大学生の学びと環境」をテーマとしたアンケートを2021年3月10日~15日にかけて、941人のT会員の皆様(2020年度大学1年生~6年生)を対象に実施しました。
本稿では、学びの環境がリアルからオンラインへ場所を移すなど、大きな変化があったこの一年を経ての、大学生たちが感じた学びの理想と現実、また今後の展望についてご紹介したいと思います。
■大学へは24.1%が「ほとんど行っていない」
2020年は4月7日から東京都など7都府県に緊急事態宣言が出され、その後4月16日に対象が全国に拡大、学校の休校や映画館など多くの人が集まる施設の使用制限が行われました。5月末に緊急事態宣言が全国的に解除された後も、それぞれの判断で感染に対する予防的措置がとられていた事は記憶に新しいと思います。
そんな中、大学生の授業は、オンラインを介する形が主流となったことはみなさんも様々なメディアを通してご存知のことと思います。では、昨今の大学生はどのくらいの頻度で大学に通学しているのでしょうか。
調査では、オンラインでの授業を除いた大学への通学頻度を質問しました。また、一年間の中で、大学へ行く頻度が異なる時期がある方は、ここ半年くらいの頻度について回答していただきました。
結果は、「年間を通してほとんど大学に行っていない」が24.1%と全体の約1/4を占めました。また、週1回未満の頻度の人を足し上げると46.4%にもなります。この数字から多くの大学生において、リアル(対面)での学びや友人と触れる機会が大きく減少している事がわかります。
■大学生は、リアルの学びの場を求めている
続いては、コロナ禍における学びを全体から見ていきたいと思います。
図2では、「2020年度大学の学習で、実施したこと」について、満足にできたものと満足にできなかったものをそれぞれ質問し、その差分を表しています。
学生からの回答で満足にできた学習として差分が最も高かった(満足にできた度合いが高い)のは、「ゼミ活動・研究室」(差分25.9ポイント)となりました。そして、「授業前後の課題やレポート」(差分24.5ポイント)と続きます。
これは、コロナ禍においても、大学や先生が課題やレポートでの学びを間に挟みながらオンラインへの対応へ舵を切った過程として表れている数字と解釈してもよいのではないでしょうか。また、授業がオンラインになった事で、自身の意見や考えを発信する場が制限されたため、密なコミュニケーションが取る事が可能なゼミ活動・研究室での活動に学びの喜びを感じ、軸足が移ったのではないかとも読み取れます。
いずれにせよ、この困難な環境下においても大学からの学びの提供に対して一定の満足度は得ていたことがわかります。
続いて、差分が低かった(満足にできなかった度合いが強い)ものを見ていきましょう。
差分のマイナスが大きい順に、「留学(オンライン留学含む)」、「課外活動」、「ボランティア」、「ディベート」となっており、”移動”や”人とのコミュニケーションを伴うもの”に満足を得られていない事がわかります。
次いで、「学内のコンテストやコンペティション」が続きますが、これらもコロナ禍により中止、もしくは場所をオンラインに移しての開催が主流になった事が想像されるため、学生のみなさんはより”リアル”での学びを渇望していると言ってよいでしょう。
■この1年の学びの達成度は、低調
図3のグラフは、この一年間における大学での学習について、「当初どのくらい積極的に取り組みたいと思っていたのか」と、「実際の達成度」をそれぞれ5段階で聞いたTOP2のスコアと、その差分(達成-取り組みたい)を表しています。
学びの達成度が高く、当初の取り組み意向を上回っている項目は、「オンライン授業でのやりとり」と「レポート課題や宿題」の2項目に留まっています。
逆に取り組みの達成度が低かったものとしては、「社会で通用するスキルの獲得」(差分-37.5ポイント)や「学生時代を象徴するような取り組み」(差分-33.6ポイント)となり、続いて「自己成長・スキルアップ」「自分の成長のための新しい出会い」と続きます。
これらの結果から学生のみなさんは、”社会での実践を見越したスキルの装着”や、”新たな人脈形成””大学時代の青春”がコロナ禍での活動制限により、自分の思い描く形としてできなかった、と考えているようです。
■大学で学びたいことと、学べることにはギャップを感じている
次に、学生が求めている“本質的”な学びの内容について図4で見ていきましょう。大学生が「身に着けたいスキルや能力」と「大学の授業で得たスキルや能力」のギャップが大きい項目から上段より表示しています。
「外国語能力」は、グローバル社会を意識していると受け取れますし、「実行力」、「主体性」といった、一歩前に踏み出し失敗しても粘り強く取り組む力を大学では習得できていないと感じているようです。
逆に大学で得られる学びとしては、「基礎的知識」、「専門的知識」、「チームワーク・協調性」や「傾聴力」といったチームで働く力や基礎的知識が得られていると認識しているようです。
ちなみに、2018年に一般社団法人 日本経済団体連合会が実施した「高等教育に関するアンケート」 主要結果では、企業が学生(文系理系共)に求める「資質、能力、知識」は、上位から「主体性」、「実行力」、「課題設定・解決能力」の順でした。この結果を図4と照らし合わせると、学生は企業が求める資質・能力には敏感なようですが、2020年度の大学での学びでは学生が求めるレベルまで行きつけなかったと言わざるを得ない状況だったのかもしれません。
■2021年度に学生が学びたいことは、資格取得が1位
2021年3月21日に、1都3県では2カ月以上続いた緊急事態宣言が解除されました。しかし、大学の自主的な制限により2021年度もオンラインでの授業が継続される大学が少なくない事が想定されます。
そんな中、大学生のみなさんは、今年どんなことを学びたいのか、また継続されると想定されるオンライン授業に対しては、どのような期待や改善を望んでいるのかを見てみましょう。
図5では来年度大学に残る3年生以下に絞り集計しています。大学生の学びたいこととして上位にくるものは1位「資格取得のための勉強」、2位「専門的な知識を深める」、3位「ゼミ活動・研究室」となっています。
自身の強みとなる知識やスキルを身に着けるための学び・活動として、学生のみなさんはこれらのものを望んでいるようです。背景として、短期的には就職活動時の自己PRとしての有用性を確保することを意識していると考えられますが、長期的な視点では政府の働き方改革による副業の推進といった、来るべき未来の働き方を見据えて自身の強みを明確化することへの意欲とも考えられるのではないでしょうか。
続いて、図6「オンライン授業を受けるにあたって改善してほしいこと、改善したいこと」を見ていきましょう。
興味深い事に、多くの大学生がオンライン授業の録画公開を希望している事がわかります。「オンラインでも理解しやすいように工夫してほしい」(42.2%)や「単調な授業をやめてほしい」(41.0%)といった“授業内容”についての数値が高い事からも、映像を見直したい気持ちや、映像であれば自分の好きな時間に視聴できるといった思いが裏側にあるように思います。また、最近の若者に見られる現象として、動画サイトの映像を1.5倍速や2倍速で見るといった”時間の有効活用”といった意識も根底にあるのかもしれません。
オンライン授業を受ける環境に関しては、椅子や机などの”自宅環境”への改善希望や”通信環境・通信量”といった映像を快適な環境でスムースに見ることができるような項目が並ぶ結果となりました。
本稿を書いている2021年3月時点では、残念ながらこのWithコロナの時代はもうしばらく続きそうです。
大学での学びや出会いは、人生に大きな影響を与え得る貴重な財産です。それを得られる時期にコロナ禍の特殊な状況を経験している、いま現役の大学生たちに対しては胸が痛む想いを感じることも多くあります。
大学生の皆さんの楽しい「キャンパスライフ」が一日でも早く戻ってくることを祈らずにはいられません。
また同時に、Withコロナの時代の学びや出会いを我々は、全力でサポートしていきたいと思います。
調査地域 :全国
調査対象者:男女・18~24歳
サンプル数:941サンプル
調査期間 :2021年3月10日(水) ~ 3月15日(月)
実査機関 :CCCマーケティング株式会社(Tアンケートによる実施)
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本調査の集計表を販売しております。
詳しくは、下記をご確認の上、お問い合わせください。
【調査内容】
質問数:全10問
内容:
・大学への通学頻度
・大学での学習で満足できたもの、出来なかったもの、来期取り組みたいもの
・大学での学習について、積極的に取り組みたい項目
・学習の経験の、達成度
・身につけたいスキルや能力と、大学の学習で得たスキルや能力
・大学のオンライン授業を受けるにあたり、改善してほしいこと、改善したいこと
【集計内容】
・単純集計
・性年代別クロス集計
【注意事項】
・クロス集計において、集計対象数が極端に少なくなる質問は出力していません。
【商品名/番号】
品名:大学生の学習環境に関する調査
番号:20-018-002
【価格】
集計一式:12,000円(税別)
【お問合せ先】
CCCマーケティング総合研究所
担当:服部/杉浦
cccmk-souken@ccc.co.jp