【生活者意識調査】『働き方改革』からwithコロナへ 変化が進む「働き方」 いまどきの実態とは?

あなたの身近な業界はどんな状況に? 8つの業種をピックアップして分析

~11月23日は「勤労感謝の日」~

 11月23日は「勤労感謝の日」です。皆さんは「勤労感謝の日」とはそもそもどのような日かご存じでしょうか。
「勤労感謝の日」とは「勤労を尊び、生産を祝い、国民互いに感謝しあう日」として1948年(昭和23年)に制定されたもので、「新嘗祭(にいなめさい)」(現在では宮廷祭祀)という五穀豊穣のお祝いがルーツにあるとされています。一説には、当時占領政策を実施していたGHQが米国の感謝祭(11月第4木曜のThanksgiving Day)と労働者の日(9月のLabor Day)を合わせて「Labor Thanksgiving Day」という言葉を作り、それが日本語訳され「勤労感謝の日」となったと言われています。
そのような由来がある「勤労感謝の日」。周囲の方々の日々の仕事を重んじ、その働きぶりや成果物に改めて感謝の気持ちを伝えたり、自身に対しても日々の頑張りを労わったりと、1年の中でも最も大事にしたい1日のひとつですよね。

 
さて今回、CCCMK総研では「働き方」に関するアンケートを、10月19日~23日にかけてT会員の方々に実施しました。
アンケートでは、次に取り上げる8つの業種(グループ)において「正規雇用」「非正規雇用」で働く方々を対象に、ご自身の勤め先での「働き方」や働く意識、また、在宅勤務・テレワークの普及などの新型コロナウイルス感染症の流行による変化や影響、さらには有給休暇の取得状況などをお伺いしました。
※調査対象とした8つの業種(グループ)は下記の通りです
 「製造業」「卸売・小売業」「情報通信業」「建設・土木業」「飲食業、ホテル・宿泊業、旅行・観光業(以下、飲食・宿泊・観光業と表記)」「教育・学習支援」「医療・福祉」「金融・保険業」
※その他、調査設計は本コラムの下段をご参照ください

『働き方改革』 各業界のいま 

 「働き方改革」は多くの人びとの耳目に触れた言葉だと思います。「長時間労働の是正」「多様で柔軟な働き方の実現」「雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保」の実現を目指し、政府・労働界・産業界間でさまざまな議論が繰り広げられた結果、2018年にいわゆる「働き方改革関連法」が成立し、2019年4月より順次施行されています。
労働者は、自身が所属する会社や団体の制度やルール、慣習のもと働いているわけですが、「働き方改革関連法」に基づき、さまざまな制度やルールの改善・改正が進められていくことになります。そこで、図1では各業界において、働き方改革を推し進めるための制度やルールがどれくらい浸透しているのか、今の実態を見ていきます。


勤め先で導入されている制度
 

 正規雇用と非正規雇用の雇用形態別のグラフからは、いずれの雇用形態でも「金融・保険業」や「情報通信業」において、制度やルールの普及が進んでいることがわかります。特に「金融・保険業」では、非正規雇用と正規雇用がさほど変わらない水準で、制度やルールが広まっているようです。
反対に、全般的に制度やルールの普及度の低さが目立つのは「飲食・宿泊・観光業」や「医療・福祉」といった業種のようです。
また、「製造業」で「出張の削減」が進んでいたり、「医療・福祉」においては「育児・介護に配慮した柔軟な勤務体系」や「育児休暇・介護休暇」が充実しているなど、業界ごとの特性が現れているものもありそうです。中でも、そうした業界特性と呼べるものとして「情報通信業」における「在宅勤務・テレワークの導入」の高さは際立っていると言えます。新型コロナウイルス感染症の大流行の影響で在宅勤務・テレワークの普及が進んでいると伝えられてきましたが、業種によるばらつきはかなり大きいことがうかがい知れます。

新型コロナウイルス感染症の流行が、働き方に与えた影響とは?

 ”在宅勤務・テレワークの普及”だけでなく、業種による好況・不況、エッセンシャルワーカー(生活維持に欠かせない職業に就いている方々)の負担の増大など、新型コロナウイルス感染症の大流行は、あらゆる業種に多大な影響を与えました。
業種によっては、新型コロナウイルス感染症の大流行のために、皮肉にも「働き方改革」が一挙に進んだと見る向きもあるかもしれません。では、実際に働いている人びとは、その辺りの影響をどのように捉えているのでしょうか。
図2では、特徴的な傾向を示す3つの業種(飲食・宿泊・観光業、医療・福祉、情報通信業)を中心に取り上げております。


新型コロナウイルス感染症の働き方への影響

 まず目立つのが「飲食・宿泊・観光業」のスコアが最も高い項目が6つもあり、そのいずれもが他の業種に10ポイント前後の差をつけている点です。業務量の激減を受けて、ストレス、今後への不安、さらには転職したい気持ちも高まるなど、コロナ禍による不況の直撃に加え、今後の回復がいまだ見通せないことへの不安もうかがえるようです。本アンケートの実施期間(10月19日~23日)は、政府や自治体等による観光・飲食店向けのキャンペーンが広がりつつある時期でしたので、今後不況の影響が緩和されていくのか、一時的なものかを注目していきたいところです。
次いで「医療・福祉」では、他の業種に比べ低いスコアである項目がいくつか見られますが、これらからは「働き方の変化が実感として感じられない」という要素を読み取ることができそうです。その一方で、業務負担が増えたことによるストレス・疲れの増大という苦しい状況も見て取れます。「医療・福祉」に代表されるエッセンシャルワーカーの負担を減らし、社会的に必要不可欠な機能を持続可能にする施策が引き続き求められていると強く感じます。
さらに、在宅勤務・テレワークの普及が進んでいる「情報通信業」では「医療・福祉」とは対照的に、働き方の変化を好意的に受け入れている様子が顕著にうかがえます。ただその反面、職場の様子がわかりにくくなったことへの不安も一定程度あるようです。在宅勤務・テレワークの浸透が今後も続いていくならば「情報通信業」はその先行事例になると見込まれます。コミュニケーション不足の不安をどう乗り越えるかが、今後の在宅勤務・テレワークのさらなる普及における試金石になるのかもしれません。

労働者の権利である「有給休暇」 業界や雇用形態で、その消化の実態には大きな差が

 「働き方改革関連法」により、有給休暇については2019年4月以降、「労働者に年5日の年次有給休暇の確実な取得」をさせることが全ての企業に義務付けられました(労働日数が年間120日以下の人や、有給付与が年10日未満の場合などを除く)。
有給休暇は、法律によって労働者に与えられた正当な権利です。しかしながら「皆使っていないから何となく使いづらい」「毎年大半を使い切れずに残してしまう」といった声をよく耳にするのではないでしょうか。
アンケートでは、今年度の有給休暇の消化見込みについて「10割(有給休暇は全て使い切る)」から「9割」「8割」・・・「1割」「0割(有給休暇は全く消化できない)」までの11段階で聴取しました。図3は有給休暇の取得状況をいくつかの切り口で集計しております。

有給休暇の取得状況


 まず目立つのが、非正規雇用の有給休暇の消化率の高さです。すべての業種で、非正規雇用の平均消化率(何割消化するか)が、正規雇用のそれを上回っていることがわかります。ただし「製造業」については正規雇用でもしっかり消化する人が多いようで、8割以上消化という回答者の割合が正規雇用と非正規雇用で同レベルとなっています。これは8つの業種の中で「製造業」だけに見られる傾向となっています。
また、業種別では「情報通信業」「金融・保険業」そして「製造業」が有給休暇の消化率が高いようです。反対に、消化率が低いのは「卸売・小売業」「飲食・宿泊・観光業」「教育・学習支援(の正規雇用)」「建設・土木業(の正規雇用)」で、2割以下しか消化できない人が、それぞれ3~4割程度いる実態となっています。特に「飲食・宿泊・観光業」では「0割(有給休暇は全く消化できない)」と回答した人が正規雇用の2割弱、非正規雇用に至っては3割弱を占めており、この実態は、業界として早急に改善すべき課題でありそうです。


 また、5年前との消化の実態の違いでは「建設・土木業」や「卸売・小売業」で有給休暇の消化率が増えたと感じている人が多いようです。この2つの業種は、現段階の業界別消化率では低い方に分類されており、有給休暇の取得という面では、『働き方改革』は道半ばであると言えそうです。

 今回は「勤労感謝の日」にちなんで「働き方」に関するアンケート結果をご紹介しました。いくつかの業界間の比較を通じて、働き方の実態や働く人びとの実感について多くの知見が得られたと感じます。
新型コロナウイルス感染症の流行の影響もあり、働く人びとを取り巻く状況はたゆまぬ変化が予想されます。その変化がもたらす実態・実感について、私たちは引き続きウォッチしていきたいと考えております。

 

【調査設計】
調査地域 :全国
調査対象者:男女・20~69歳 ※スクリーニング調査を人口構成比にあわせて回収
サンプル数:2037サンプル
調査期間 :2020年10月19日(月)~10月23日(金)
実査機関 :CCCマーケティング株式会社(Tアンケートによる実施)
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本調査の集計表を販売しております。
詳しくは、下記をご確認の上、お問い合わせください。

【調査内容】
質問数:全10問
内容:
・在宅勤務・テレワークの実施頻度
・在宅勤務・テレワークの普及に対する意識、その理由
・新型コロナウイルス感染症の流行による働き方の変化
・職場で導入されている働き方のルール、またコロナ禍による取り組みへの影響
・自身の勤め先での「働き方」に関する取り組みや「働き方」そのものに対する意識
・有給休暇の消化率、および1年前・5年前との比較
・職業、業種、職種、勤め先(会社/事業所)の従業員規模

【集計内容】
・単純集計
・業種×正規雇用/非正規雇用別クロス集計
【注意事項】
・クロス集計において、集計対象数が極端に少なくなる質問は出力していません。

【商品名/番号】
品名:働き方に関する調査
番号:20_007-002
【価格】
集計一式:12,000円(税別)

【お問合せ先】
CCCマーケティング総合研究所 
担当:服部 / 杉浦         
cccmk-souken@ccc.co.jp