好調続く「おにぎり」の進化

本レポートは、CCCMKHDがV会員にサービス提供している家計簿アプリ「レシーカ」ユーザー(約5万人)のレシートデータと、CCCマーケティング総合研究所による全国主要企業へのヒアリング調査に基づき、独自の視点で「食」業態を中心としたレポートをお届けします。
 

成長続く惣菜市場の行方
 中食・惣菜市場は再び活況を呈しています。日本惣菜協会の調べでは23年度の国内の中食惣菜市場は10兆9827億円と前年比4.9%の成長となっています。新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、20年は10兆円を割り込んでいましたが以降は回復傾向が鮮明です。中食・惣菜市場はコンビニエンスストアが市場拡大を牽引してきましたが、この10年の市場拡大の動きをみると、コンビニエンスストア市場以上に勢いを増しているのがスーパーマーケット市場です。さらに直近の動きでは、ドラッグストアにおいても中食・惣菜の取り扱いが広がりつつあり、小売市場においては中食・惣菜は売り上げ拡大につながる重要な売り場と言えます。
 中食・惣菜市場をカテゴリー別にみると、米飯類が市場規模4兆8161億円と惣菜市場全体の43.9%を占めるが、このカテゴリーにおいては言うまでもなく「おにぎり」が主役です。近年は具材強化した高級おにぎりやコメの品種にこだわったおにぎりなど、高級路線が拡大基調にあります。炊き込みごはん、混ぜごはんタイプのおにぎりも好調なアイテムが多く、まだまだ「おにぎり」の進化は続いていきそうです。米飯類に続く割合を占めるのが揚げ物や炒め物、サラダなどが含まれる「一般惣菜」で、市場規模は3兆8299億円、構成比は34.9%を占めます。揚げ物類はコロナ禍以降、特にスーパーマーケットにおける惣菜売上の拡大に大きく貢献しています。焼き物では焼き鳥などが全国的に堅調に推移しているほか、清掃の手間などからグリル調理が敬遠される中で、焼き魚がゆるやかに拡大する傾向を示しています。一方、サラダはデパ地下中心に惣菜市場拡大に大きな役割を果たしてきましたが、カット野菜の普及により、やや変調してきている面もあり、その動きは注目されるところです。伸び率だけでみると最も市場拡大が鮮明になっているのは「調理麺」で、和・洋・中すべてのカテゴリーで伸長が続いています。最近はデパ地下でも「調理麺」を販売するショップが出現してきており、アイテム拡大の進展とともに、さらなる市場拡大が見込まれます。
 生活者の効率的な時間の使い方に対する意識の変化に加え、メーカー各社の技術革新によって中食・惣菜市場は拡大基調にありますが、この1~2年で市場拡大に追い風となっているのがインバウンド客の利用です。中食・惣菜市場は外食とは異なってインバウンド需要がなかなか見込みにくい状況が続いていましたが、SNSを通じて、日本の「おいしい惣菜」が知られるようになり、インバウンド客の利用が拡大基調にあります。コンビニエンスストアで提供される各種中食・惣菜アイテムは特に好評を得ており、訪日した際に体験したいことでもランクインするほど、注目されています。コスパ・タイパといった視点でも中食・惣菜は生活者ニーズをしっかり掴んでおり、今後も市場拡大を続けていく可能性は極めて高いと予想されます。中食・惣菜はコンビニエンスストア、スーパーマーケット以外のチャネルでの取り扱いが拡大し、業態間競争の優劣を決定づけるものとして、ますますその重みは増してくるとみられます。




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※レシーカとは、CCCMKホールディングス株式会社がV会員に提供する家計簿アプリ。
レシーカユーザー(約5万人)のレシートデータを分析することができる。


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担当:奥田